写真手帖

写真作家の2人が写真を撮りながら考えたこと。

森山大道さんの「犬の記憶」を今更読んだ

 

こんにちは、kikutaです。

 

写真家の大御所森山大道さんは文章家としても有名で、いくつか書籍を出されています。

その中で文庫版の犬の記憶を古本屋さんで見つけたので、読んでみました。

 

この本は彼の写真人生のエッセイなのですが、読み物としてかなり面白い。

森山さんはとても人間的で、魅力的な人物だということをひしひしと感じました。

 

彼は戦後の大阪の混沌とした街を原風景に持ち、幼い頃は土地を転々としたようです。

そのため明確な故郷がなく、彼にとっての故郷とは、漠然とした遠い記憶の集合体なのでした。

そして、いつもどこか故郷や原風景を求めている節があると綴られていました。

 

彼の混沌とセンチメンタルさが入り混じったような独特な写真世界は、こうした背景からきているのかもしれません。

 

 

彼が写真をスタートしたのは、失恋がきっかけのようです。デザイナーとして働いていた彼は、失恋の後、じっとデザインを思案していることがあまりに苦痛で辞めてしまったようでした。パチパチ写真でも撮ってる方が幾分か楽だと。

このエピソードは人間らしくて、なぜか妙に親近感を覚えました(笑)

僕は建築屋ですからデザイナーと近いことをしているわけで、失恋した後に設計とか本当に苦痛なのです。パソコンなんかゴミ箱に放り込んで遠くに旅にでも行きたくなりますね。

 

 

読み進めると、どうやら彼の作風には「故郷」「戦後」がかなりキーになっているように感じます。

 

やはり、作家自身にとって大切なことや身近なものに鍵があるのですね。

僕や都内のシティボーイが急にカンボジアの子供達の写真を撮っても、結局は深い思慮を含んだ作品にはなれないということですね。

いくら本を積んでPCの前でうんうん唸っても、実体験という厚みには全く敵わないわけです。

 

だから僕は、大学生が就活前にやたらとカンボジアに行くの嫌いです(笑)

 

 

これについては、大学の研究室の教授にも散々言われました。

 

「等身大の君の、素朴な疑問や発見から作品がスタートする」

 

森山大道さんはこの言葉をまさに体現しているようでした。

原風景を探し続けるという純粋な行為の積み重ねが、シンプル故に物凄いエネルギーを生み出し、あそこまでの世界観を創りあげてしまったのかもしれません。

 

その他にも彼の様々なエピソードが語られています。

写真雑誌PROVOKEについてや、ライバルであり親友でもある中平卓馬さんとの逗子や横須賀付近でのエピソード、細江英公さんの元での修行時代についてなどですね。

 

文庫版であれば古本屋などで500円くらいで売ってると思います。皆さんも、見つけたら是非読んでみて下さいね。

 

 

 

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↑は森山大道さん的なアレブレボケモノクロで撮った写真です。

当たり前ですが、なんだかやっぱり彼とは違う視点ですね。

 

 

森山大道さんの書籍も紹介しておきます。最近発売されたCOYOTEの特集号は読みやすくておすすめですよ。

またね。

 

 

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